2025.02.12
小さい家を建てることをおススメする理由
小さい家とは?
小さい家の定義
伊礼氏は本の中で小さな家を延べ床面積30坪程度を想定していますが、この記事では具体的な面積よりも、リビングは○○畳必要、といった大きさに対する先入観を取り払って、決まっている総予算の中で建てられるような家を「小さな家」と定義したいと思います。
小さくすることで出来た予算の余裕を、安くなったと喜んで終わりにするのではなく、伊礼氏も言っているように、小さくすることで出来た余裕を家の質にぜひ使って欲しいと思うのです。
小さい家にする心構え
家を建てる時の家族構成や他の要因が生涯続くか考えてみませんか?
何が言いたいのかと言うと、
ベビーカーを置く土間が欲しい! ⇒ そのベビーカー5年後に使ってますか?
「しばらくの間」と割り切って玄関の片隅に置きませんか
子供が3人いるから子供室は3部屋必要 ⇒ 独立した子供室が同時に必要ですか?
仮に小6、中2、高1ならば男女別に分けてもいいし、受験生がいればその子を優先的に個室にすればいいですね。また、いずれ大きい子から出ていく可能性も高いですね。
このように家族構成やその他の要因は流動的で固定されたものではないと認識した上で、小さい家の間取りを考えたいものです。
この時代に家を建てることの意味
2025年4月に法改正があり、省エネ基準の適合が義務化され断熱等級4以上が必須となります。
それに伴い、建物の強度を上げるため構造計算も必須となります。
さらに2030年には断熱等級5(ZEH基準)が義務化されます。
これらは何を意味しているかというと、国がこれからの家は断熱性能を高く、地震に強くしないと建ててはいけない、というルールを作ったことになります。
実はこれらの基準は難しい物でも何でもなく、むしろ最低限の基準です。
ちなみに弊社では断熱等級6、耐震等級3(許容応力度計算)は標準です。
30年後に子供たちに負の遺産を残さないためにも、今から建てる家は断熱も耐震もより高い性能を持った家にすることが必要です。(自分たちが死んだら解体したらいい!という考えには賛成しかねるのですが、そうされるのであれば費用を残してあげてくださいね。)
それらを踏まえて、質の良い高性能な小さな家が必須だと思うのです。
では、具体的に小さな家にすることでどんなメリットがあるのでしょうか?
小さい家にすることで総建築費が下がる
土地の選択肢が増え、かつ安くなるかも
家の間取りは土地が決まってからでないと決められませんが、それでも小さい家にするという前提であれば、変形地を含め選択肢は増えます。
家の大きさにとらわれていたら見逃しそうな土地でも候補地となりますね。
必要な土地の大きさが小さければ価格も安くなります。
また、変形地や売りづらいような土地も候補に入るため、売値が安いこともありそうです。
床面積が小さくなることで、基礎や外壁・屋根なども小さくなる
これはその通りで、使う材料が減ることでコストも下がります。
また、外壁が小さくなる分取り付ける窓も少なくなりそうです。
内装材量も小さい分少ないし、照明やコンセントも少なくなる
外壁と同様家が小さくなると内装材も減ります。
空間を細かく仕切らないようにすれば、室内建具の数も減ります。
照明の数やスイッチ、コンセントの数も減ります。
小さい家にすることで質の良い家になる
前章で小さい家にすることで総建築費が下がると書きました。
その余裕の出来た予算を
〇断熱や耐震の性能を上げる
〇長く使える本物の材料を使う(具体的には新建材を使わない)
に振り向けることで、質の良い家になります。←ここは本当に大事
人は質の良いものは大切に扱うし、愛着が湧きます。
家ももちろんそうです。
小さい家を貧相な家にしない 性能編
2025年からの住宅に関する法改正について簡単に先述しました。
詳しい法律や国の方針は横に置いといてでも、断熱(気密も含む)耐震性能はしっかりと確保しましょう。
なぜなら、断熱性能を上げると少ない光熱費で冬は暖かく夏は涼しく暮らすことが出来ます。
これはとても快適な暮らしだと思いませんか?
具体的には断熱材の厚みを多くする、窓を樹脂窓トリプルにする、付加断熱をするなどになります。
一方耐震は断熱と違い、毎日暮らす中では実感しにくいものです。
ですが、許容応力度計算による耐震等級3の性能は熊本地震(震度6強連続)においても軽微な損傷で済みました。
いざという大地震の時、命を守るだけではなく避難所に行かなくても暮らせる家があるのは心強くありませんか?
そしてとても大事なこと!
これら性能に関しては建ててからでは(リフォームでは)不可能です。正確には可能ですが現実的ではありません。
建てる時にやるのが結局一番リーズナブルで、結果ずっと安心して暮らせます。
小さい家を貧相な家にしない 外壁編
外壁は家にかかるお金の中でも、建てる時も建てた後も大きなウエイトを占めます。
建築時に安くなるからと安価なサイディングを採用すると、10年後、20年後にメンテナンス費用が結構な金額で掛かります。
コーキングの打ち直しや壁面の塗り直しが定期的に必要になります。
是非、小さくすることで余裕の出来た予算を外壁に振り向けてください。
おススメは塗り壁や板貼りの外壁です。
メンテナンス費用が安価に済みます。
何より本物の素材が見せる外観の印象はとても良いものです。
こちらが木の外壁について書いた記事になります
外壁に木材を使う 木の家の外観と経年変化の実例
小さい家を貧相な家にしない 内装編
小さい家にすることで余裕の出来た予算を性能、外壁に振り向けた次には内装に目を向けたいですね。
新建材といわれる既製品を使わずに、無垢の素材を使うことをおススメします。
なぜ無垢の素材を勧めるのか、その理由は経年変化と質感(特に触感)にあります。
新建材といわれる素材が劣化するのに対し、無垢材は変化するととらえています。
無垢床材の10年後:経年変化の美しさが愛着を育む
特に床材は後での変更(リフォーム)が大変なことからも、建築時に質の良いものを選択しておくことをおススメします。
柔らかいものがお好みの場合は杉や桧、硬めの物がお好きな場合は広葉樹(ナラやクリなど)をおススメします。
価格的には無垢の床材が特別に高いという訳でもなく、より高い複合フローリングも多数存在します。
床材についての記事はこちらです。
滋賀の工務店が国産無垢の床材をまじめに推すブログ
直に触れることの出来る壁も素材感の違いが良くわかるので、無垢材をおススメします。
具体的には塗り壁や板貼り、紙壁紙や和紙です。
建具も既製品のシート貼りよりも、造作建具をおススメします。
室内建具の種類|木の家に合う無垢材7選
小さい家を心地良く造るコツ
延べ床面積30坪の家は延べ床面積40坪の家に比べて狭い。
これは当たり前のことで、正解です。
では、実際に暮らしてみて10坪の差を本当に「狭い!」と感じるのか?
実はこれは一概には言えません。
設計によっては、30坪の家の方を広々と感じるものです。
抜け感をつくる
モデルハウス
↑こちらは造り付けソファのある4畳半サイズのリビングです。
コーナーにある窓と吹き抜けが抜け感をつくります。
視線の先に窓があると(コーナーはより良い)視界が行き止まりにならず、抜け感を得られます。
M邸
リビング続きにウッドデッキ(床面積に含まれない)を設けると、リビングの延長のような効果があります。
天井を低くする
天井が高い方が開放感があって広々と感じるように思いがちですが、床面積が小さい場合は逆効果になります。
また、低い場所があるからこそ、吹き抜けの抜け感もより効果的になります。
天井を低くすると、窓などの建具の上に壁がなくなるのでとてもすっきりとします。
O邸 天井高2200
空間を細かく仕切らない
例えば子供が2人いるからと6畳の部屋を2つ作るのではなく、ひとつの空間を家具などで仕切って使う。
そうすれば子供たちが巣立った後に仕切りを取り払って大きく使えます。
また、玄関とリビングの間に建具を設けず、一体化した空間にする、などです。
モデルハウス
家具を造り付けにする
小さい家に置き家具を入れると無駄なスペースが出来てしまうことがよくあります。
間取りのサイズに合った造り付け家具を作ることをおススメします。
ピッタリと納まった家具は見た目も美しく、何よりあなた用のオリジナルですから使いやすいものです。
S邸
小さい家は短い動線をうまく作る
面積が小さいのですから歩く距離も短くなります。
ただ、家の大きさに関係なく、行き止まりの多い間取りにすると使いづらいだけでなく、狭く感じます。
ぐるっと回れる回遊動線を取り入れ、小さい家ならではの動きやすい間取りにしましょう。
小さい家にしたら暮らすためのコストが下がる
家は建てる時にもたくさんのお金がかかりますが、住んでからもお金はかかります。
暮らしながらかかってくるお金ですから、少ない方が助かるのは明白です。
小さな家にすると住んでからのコストも小さく出来ます。
小さくなった分と性能面が上がったことで火災保険が安い
火災保険の金額は家の大きさに比例するので、小さい家は安く加入できます。
また、耐震等級3を取得していると地震保険も安く加入できます。
小さくなった分と性能面が上がったことで光熱費が安くなる
主に冷暖房費が安くなります。
家の体積が小さくなったことも理由のひとつですが、家の性能を上げることもとても効果的です。
外壁内装に長く使える材料を使ったので、生涯メンテナンス費用が安い
先述したように長く無垢の素材を使うことは、経年劣化ではなく変化と捉えています。
取り換えが必要な性能劣化がなく、必要な時に適切なメンテナンスさえあれば長く使えるのが無垢の素材です。
小さい家なので税金が安い
固定資産税が安くなります。
長期優良住宅の認定があれば最初13年間、住宅ローン控除も受けられます。
小さい家にすることでひとりでも暮らしやすい
暮らし始めたころの家族構成が夫婦と子供2人の4人だったのが、いずれ子供たちは独立して夫婦だけになり、最後にはひとり暮らしになります。
何部屋もあるような大きな家でひとり暮らすよりも、小さな家で好きなものに囲まれて暮らす方が素敵だと思いませんか?
掃除も含めた維持管理がしやすい
歳をとっても出来るだけ自立して生活をしたいものです。
そんな時に大きな家だとお掃除ひとつとっても大変です。
大きな家ですと物も多くなるでしょうから、物の管理や手入れも大変です。
性能の良い小さい家は将来売却しやすい
冒頭に書いたように建築費が高騰し今後下がる見通しもない中、中古住宅の需要が伸びると言われています。
その中でも断熱耐震が高性能で、根本的なメンテナンスがそれほど必要のない中古住宅は需要が高まりそうです。
一人暮らしになった時、施設などへの住み替えを考えると売却しやすい家というのはポイントが高いと思います。
まとめ
家の大きさに対する先入観(例えばLDは20畳とか)を捨てると、小さな家が持つ多くのメリットに気付くと思います。
建築費が高騰している今だからこそ、安い材料で建てた性能が低い家よりも、床面積を少し小さくしてでも質も性能も良い家を建てた方が結局は満足度は高くなると確信しています。
この記事で抜粋させて頂いた、伊礼智氏の「小さな家」70のレシピ、を是非読んでみてください。
伊礼智の「小さな家」70のレシピ
弊社でも建てさせて頂いている家の床面積が、10年前に比べて小さくなってきています。
でも、小さくなったからこそ設計の工夫は増えました。
小さい家は狭くも貧相でもなく、上質な家になり得ます。
是非、家の大きさの先入観から解放されて、検討してみてください。