滋賀の工務店が国産無垢の床材をまじめに推すブログ
住宅の床材についての基本の知識はまずこちらから そもそも論ですが、皆さんは無垢の床材を正しく理解…
先日のブログ、「上棟日に雨が降りそう・・・」のところでもちょっと触れましたが、木は雨に濡れたらいけないのでしょうか。
上棟の際は出来れば濡れない方がいいです。
じゃ、濡れたら一体どうなるのでしょうか。(カビるかも、とはお伝えしました)
皆さんが良く心配されるのが
「腐るんじゃないの?」
という疑問です。
今日はこの疑問にもお答えしていきます。
まずは先日の記事を読んでらっしゃらない方にこちら。
濡れてもいいのかダメなのか、
どっちなんだ!
と言われれば、もちろん濡れることはよくありません。
ただ、これは程度の問題がありますので、絶対ダメって訳ではありません。
濡れても乾燥させればOK
濡れても濡れる程度によってOK
実は木は濡れることよりも、木材自体が持っている水分の量が問題なのです。
これについては後で説明します。
無垢の木を扱う会社は必ず言います
「含水率(※)を〇〇%にしています」
私もかならず言います。
※木に含まれている水分の事で、使われる部位にもよりますが20%前後が良いとされています
お客様にしっかり乾燥した木である事を説明する為に、弊社の取引先(木を購入する先)には、しっかりと乾燥された間違いない商品であるか、確認の意味でも必ず聞きます。
何で木を乾燥させなければならないのかは、後で説明します。
この含水率の良し悪しで家の構造や仕上がりに大きな影響が出てきます。
そのため工務店及び製材所さんは様々な工夫と努力で、含水率を抑えた木材を使っているのです。
弊社が良く使うヒノキや杉は立木の状態ですと、木材自体の約1.5倍の水分を含んでいるそうです。150%ですね。
どうやって、含水率を落していくのか。
木の中には自由水と結合水という2種類の水分があります。
導管内を通る”水”の状態の物を自由水と言います。
細胞を形成する”水分”としての状態を結合水と言います。
自由水は”水”なので、簡単に抜く事が出来ます。
簡単って言うと製材所さんに怒られそうやな(苦笑)
自由水が抜けきると、その木の持つ含水率は概ね30%前後になると言われています。
もちろん何十年もほったらかしで乾燥(天然乾燥)させておけばもっと下がりますが、なかなかそこまで待っていられませんので、機械(人工乾燥)を併用しながら含水率を下げていきます。
含水率は20%前後まで下げなければなりませんから、そうなると当然結合水を抜かなければなりません。
しかし、これは水でなく組織を形成する水分なので、そう簡単に抜ける訳ではありません。
そのため製材所、工務店は様々な方法で水を抜く努力をしているのですが、その方法はまた別の機会に書くことにします。
この結合水ですが、成長する過程で木の細胞となった水分ですから、一度抜けると、今度これを戻すのはかなり難しいのです。
なんでも結合水を戻すには240℃の熱を加えないと無理だそうです。
食べ物を蒸す時に使われる蒸籠(せいろ)がどんなに蒸しても、腐ったり曲がったりしないのがその証ですね
つまり、余程雨に濡れ続ける事が無い限り含水率が30%とか40%になる事はないんですね。
表面がちょっと濡れてるだけと思ってもらって問題ありません。
ましてや腐るなんてことはあり得ません。
これが上棟の際に雨に濡れても問題はない、という意味です。
最初にも言いましたが、濡れない事が一番です。
ただ、濡れても表面だけなので、その後の乾燥などしっかりとした対応さえしていれば問題ありませんのでご安心ください
上棟時の雨濡れから始まった木と水の関係
最後は乾燥です。
なんで乾燥させる必要があるのか?
概ね次の2点です。
● 木が強くなる
● 木が反ったり、割れにくくなるのです。
実は木は乾燥することで、強度性能が高くなる性質があります。
曲がりに対して折れにくくたわみにくくなります。
また、乾燥する過程で寸法の変化が進み、結果建築材料になってからは反ったり割れたりしにくくなる、ということです。
まず木は伐採してからどんどん水分が抜けていきます。
水分が抜けて含水率が落ちるのに比例するように強度が増していきますが、
含水率は10%前後になると、そこで下げ止まりになります。
その下げ止まりの状態になるのが3~10年と言われておりますので、家を建てた時に聞こえる「ピシッ、ピシッ」というポルターガイストの音(木が乾燥してワレたり反ったりする時に出る音)は、築3年頃までは聞こえてきますが、それ以降音は減ってきているはずです。
3~10年で木の水分が抜けるのは止まってしまいますが、木の強度はまだまだ上がっていきます。
ある調査結果を見ますと伐採から200年後まで、木はどんどん強度を増していくんですね。
そこからゆるやかに木は強度を落していき、伐採時の強度と同じまで戻るのは1300年後です。
130年じゃありませんよ、1300年です
どうですか?
無垢の木の強さを何となくですがご理解頂けたのではないでしょうか?
ちょっと専門的な話になりますが、自然乾燥で可能な含水率30%になった状態を繊維飽和点といいます。
この状態までは木の伸縮はおこりませんし強度も基本的には変わりません。
ここから1%含水率が下がるたびに、曲げ、せん断、圧縮といった強さが数%ずつ上がっていきます。
含水率は下げれば下げるほど強度は上がっていくのです。
わかりやすく言うと、細い木の枝って、生えてる状態(乾燥してない状態)の時って手でぐにゃっと曲げられますよね。
ところが、折れて地面に落ちている状態の枝で、ある程度乾燥していると固くなって曲げるどころか折りにくくなります。
但し、もっと乾燥すると、逆に弱くなってしまい、簡単に折れるどころか踏むだけで粉砕されてしまいます。
ちょうど粘りもあって固さもある強度というのが、樹種にもよりますが7%~20%の間ぐらいと言われています。
弊社で採用する無垢材は構造材は20%前後、造作材は10%台と規定しております。
概ね乾燥した状態で使いますので、比較的材料の動きは少なく、またワレや反りも出にくくなっています
但し、、、
いつも口酸っぱく言わせてもらっているのですが、それでも木は動きます。
ワレや反りも木の味と思って採用していますので、ここについてはご理解下さい。
先日、ある大学教授の講義を聞いていたのですが、残念ながら木のワレがある事で強度の低下はあるそうです。
但し、実際の木材を使い強度試験をした所、割れのひどいものや節の多いもので個体差はあるものの、木造住宅で使うレベルの荷重には全く問題のないレベルの強度低下だそうです。
無垢の木は強く、そして長くもつ性能があります。
しかしながら、それを活かすも殺すも調理する板前さん(山師、製材所、工務店、職人)次第なんですね。
木の特性を知らず、無垢の木を使う事はある意味危険です。
但し、木の特性を知ればこれほど、住まいに適した素材はありません。
このブログを読んで下さった方は、もう無垢の木マイスターです(笑)
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